アメリカの新しい教育トレンドを知りたい!!という思いを抱き、我々 FutureEdu Tokyoの自主上映会で上映した “Most Likely to Succeed” の舞台でもある、High Tech High High School を訪問しました。第1話は、High Tech High の小学校の1つであるNorth County校の見学レポートです。
High Tech Highは、現在は幼稚園から高校まで13校と教育大学院を有しています。High Tech Elementary North Countyは4校あるHigh Tech Highの幼小一貫校で、High Tech Highと同様にプロジェクト・ラーニング・メソッドを採用している公立のチャータースクール(特別認可学校)です。公立校なので授業料は無料で、進学を希望する生徒は、住民の地域属性を反映した形で抽選となります。一度入学すると、その後は高校まで内部進学できます。地域性もあり、半数近くが給食補助を受けており、私学有名校とは違い、学校に通ってなければコンピューターへのアクセスが必ずしも保証されていないというのが一つ驚きでした。
南カリフォルニアらしい遮るものがない青空の下、1階建ての平屋の校舎に入り受付で名前を告げます。子供たちの様子を見ながら学生アンバサダーが来るのを待っていたのですが、誰も来ない。"Hi,"というかわいい声がするので振り返ったら、低学年の子供が2人立っています。学生アンバサダーとは、正に小学校の学生だったのです。"Hi"と返事をして壁の絵を見ていたら、はにかみながら話しかけてきました。
はるばる日本から来たのに、小3の子供たちの説明でこの学校のことがわかるのか一抹の不安を感じながら始まったスクールツアー。子供たちの話では、ツアー・ガイドに志願した子供たちは一通りのトレーニングを受けて、見学希望者が来たらボランティアで学内を案内しているとのこと。誰でもなれるわけではなく先生から(この子なら授業を途中で抜けても)大丈夫というお墨付きがないとなれないそうです。
年間を通じた授業の構成、校舎の作り、クラスの人数、入学方法(抽選)、簡単な学校の歴史など、私たちの矢継ぎ早の質問に「わからない」ということなく、どんどん的確に返事をしてくれたのには驚きました。最後には、彼らの先生にも直接話を伺い、先生たちが各々の得意分野を持ち寄り、地域の特性も活かした独自のプロジェクトプランを練っていることも学びました。
唯一困ったことはこのスクールツアーには続きがあったことです。子供たちは自分たちのツアーが終わったら教室へ帰ってしまい、私たちもお隣の中等部も見学できることを知らなかったので次のツアーに大幅に遅刻してしまいましたが。。。。それもご愛嬌です。
「勉強好き? 」「この学校のどこが嫌? 」という大人の誘導尋問にもきちんと回答してくれました。小学3年生は正直です。今回のスクールツアーでは、とてもオープンに、大人が介入することなく見学ができたことにちょっと面喰いましたが、よくよく考えると学校のことは当事者の生徒に聞くのが一番ですね!
今回の小学校訪問で一番印象に残ったのは学校の詳細よりも 初対面の外国人に物怖じすることなく堂々と説明をしてくれた生徒たちの姿です。どれだけの小学校がこのように自校の生徒を信頼して訪問者の案内をまるまる任せられるでしょうか。子供たちの様子から、彼らが日ごろいかに周囲の大人から信頼のもとに任されているかが伝わってきました。
教室の様子が廊下からもよくわかる、オープンな空間
映画ではプロジェクト・メソッドのような未来型教育に関心を持つ一方で、選択に迷い躊躇する親や生徒の姿が描かれていました。一足飛びにあちらへ行くのは不安だけれど、今のままの教育も心もとないと考えている親が出来る最初の一歩は、子供を子供扱いせずに信頼することだと感じました。具体的には、子供だから出来っこないという先入観を捨てて、人として丁寧に接すること。未来型教育はその延長線上にきっとあると痛感した訪問でした。
(Marie)
アートルームに飾ってあった、ナンバープレートをつなぎ合わせたオブジェ
私の感想(Emi)
High Tech High は、2000年に始まった、チャータースクールです。チャータースクールという言葉に馴染みがない方もいらっしゃると思いますが、近年米国では、学費が無料でよりユニークな教育が受けられるオプションとして、チャータースクールの数は10年間で3倍になるほどの伸びを見せています。
日本では以前チャータースクールの動きがあったものの、導入にいたらなかったと聞いたことがあります。しかし、その学校にはHigh Tech Highほどカリキュラムへの自由度はあったのでしょうか?とても気になります。日本でも戦前は、隣のトットちゃんが通ったときわ学園など、カリキュラムや授業の進め方にとても特色のある学校があったようです。と考えると、規制や枠組み次第では、日本でも公教育の一環として、High Tech High のような、先生が独自にカリキュラムを考えて教えることができるようなオルタナティヴスクールも実現できる可能性があるのではという希望を感じてます。
訪問先のHTeでは、子供たちが生き生きとして自分たちのプロジェクトや学校について語る姿を見て、プロジェクト学習が体裁だけではなく、生徒の学びを主体化している事にとても感銘を受けました。Education から Learning という言葉がより使われている様になってきてますが、Learners を育てている場所だなというのは、先生や子供達と話をしてとても伝わってきた旅でした。
今回の学生アンバサダーの2人
元気に子供たちがあそぶ校庭には、木がふんだんと使われていた
"Be What You Want To Be" - 素敵なメッセージです!
子供達の作ったプロジェクトのアウトプットとして、様々なアート作品が展示されている