「学び」を考える40冊の2日目は、”多面的にこれからの「学び」のあり方を考える”がテーマです。環境、未来の世界、先端的教育など、「学び」の環境はどうあるべきかについて妄想を誘う本を、多彩な選者の視点で紹介します。
連載4回のテーマはこちら
Part 1: 保護者や教育者としてのあり方を考える (12/26)
Part 2: 多面的にこれからの「学び」のあり方を考える (12/27) <= 今回
Part 3: 「深い学び」を楽しむ人になる (12/28)
Part 4: 子ども部屋に置いておきたい、親子で読みたい (12/29)
過去・地球・テクノロジーから未来を考える
宇宙船地球号 操縦マニュアル (ちくま学芸文庫)
バックミンスター・フラー (著), Richard Buckminster Fuller (著), 芹沢 高志 (翻訳)
文庫:224ページ
出版社: 筑摩書房 (2020/10/10)
推薦者:秋吉浩気、VUILD
おすすめポイント:「AI的専門分化から脱し人間的な包括者になり地球を再生するためのヒントがちりばめられている。」
こんな人に読んでほしい:「50年後の未来を考えたい人に、50年前に書かれた本を読むことを勧めたい」
編集部から:建築の未来を描く起業家、秋吉氏のお勧めの一冊は、20世紀の最も著名なデザイナーでイノベーターと言われるフラー氏による名著。気候変動危機が謳われる昨今では、地球市民という言葉も聞かれるようになってきましたが、世界を多様な生物のつながりで織りなされるシステムととらえ、個別最適化、専門家を奨励する現代社会に警鐘を鳴らす一冊です。
フラー氏の功績について3分で知ることができる動画はこちら(英語)
はじめて学ぶ環境倫理 未来のために「しくみ」を問う (ちくまプリマー新書)
著者:吉永 明弘
新書 : 204 ページ
出版社: 筑摩書房 (2021/12/9)
推薦者:植山智恵、株式会社project MINT 代表取締役
おすすめポイント:「「環境倫理」と聞くと一見難しいようなイメージがあるかもしれませんが、こちらの一冊は未来の環境を考える上で、どんなことを本質的に考えなくてはいけないのかと基本主張を優しく教えてくれます。例えば、人間だけでなく、生物や生態系にも生存権利があること、現在世代は未来世代(生まれていない世代も含む)に対して責任があること、地球の資源は有限であるということ、などです。どんな年齢の方でも、自分が身近にどんなことからやって行こうか、誰かと一緒に取り組もうかという意欲を掻き立ててくれるだけでなく、世代を超えた有意義な対話ができるようになると思います。」
こんな人に読んでほしい:「保護者や小中学生」
編集部から: パーパス(自身の人生の目的)を大人が再発見し、実戦に移すことを支援されているプロジェクト MINT 代表植山氏によるオススメの一冊。法政大学人間環境学部教授の吉永先生による、社会システムにより気候変動危機の原因や対策を考えようという学問、環境倫理の入門書。
環境倫理とは?「市民や企業などがみずから環境を破壊することのないよう配慮し,生活様式や企業活動の形態を環境保全型(環境保全型社会)に改めるための倫理。」出典 (コトバンク)
ピーター・ディアマンディス (著), スティーブン・コトラー (著), 山本 康正 (その他), 土方 奈美 (翻訳)
単行本: 448ページ
出版社: NewsPicksパブリッシング (2020/12/24)
推薦者:Ed、Crimson Global Academy
おすすめポイント:「不確実性が増している今の世の中がどこに向かっているのかを完全に予測する事は不可能だ。しかし、今世の中に出てきているテクノロジーを紐解く事で、ヒントは得られるかもしれない。連続起業家であり、最先端のテクノロジーに触れてきているピーター・ディアマンディスがテクノロジーの最前線と未来予測を紹介する一冊。」
こんな人に読んでほしい:「VUCA時代を生き抜くために必要なマインドセットを身に着けたい方は必見!」
編集部から:ニュージーランド政府公認のオンラインインターナショナルスクールの日本代表 Ed さんによるオススメの一冊。シンギュラリティ大学の共同創設者兼会長で、世界の大きな課題を解決する大会、XPrize 財団の創設者兼会長のディアマンディアス氏による本書は、一部の産業ではなく、食料や医療という基本的にニーズを含め、世界がテクノロジーによりどう変化していくのかを示唆する一冊。著者はテクノロジーが世の中の大きな課題全ての処方箋というスタンスなので、その点には気をつけて読まれることをお勧めします。
多様な実践からこれからの学びを考える
新・エリート教育 混沌を生き抜くためにつかみたい力とは?
著者:竹村 詠美
単行本(ソフトカバー):256ページ (2020/7/23)
出版社:日本経済新聞出版
推薦者:ミオ、語学学校ストーリーシェア オーナー
おすすめポイント:「他人や組織を批判するのではなく、みんなで一緒に考えましょうというスタイル、社会1人1人がステークホルダーという考えと、親や先生が時間がなくてできない実例を圧倒的多数集められたことで、今後同じ地球で生きていく人類が平和に幸せに暮らしていけるために教育はどうあるべきかの文脈を誰がみてもわかるように仕上がってるのはコンサル経験の強みで周りの方達に読んでもらうだけでも理解を促す助っ人にもなりえる、さらにアメリカだからできるというできないよくある意見にもみずから教育イベントを起こし多くの教育関係者の方達と日本でどうなるかを試された実験結果も書かれていて、日本でも同じような教育内容ができた事も事例として貴重なデータを掲載。こんな本はおそらく今後もでないです。未だに敷かれたレールの受験向けの教育を求める大人もいます。情報がきちんと行き届いてないだけの気がしますので是非多くの方に読んでいただきたいです。作者の心の訴えを静かにしかし強く感じる渾身の1冊。繰り返しますがこんな教育の本は他にありません。」
こんな人に読んでほしい:「親、学校、教育関係者は必須。そしてこどもや生徒、市役所や行政、それを支える企業役員、株主。」
編集部から:フィリピンと日本を英語教育などでつなぐ事業を展開されているミオさんによるオススメは、なんと編集部竹村の著書でした。(我々からは一切お願いしておりません)ミオさんの様に教育事業を行なわれている方や先生だけでなく、これからの学びについて考えたい保護者の方にも読みやすい内容となっています。
ダニエル・ゴールマン (著), ピーター・センゲ (著), 井上英之 (監修, 翻訳)
単行本:232ページ (2022/3/29)
出版社: ダイヤモンド社
推薦者:斎藤 春香、三田国際学園中学校・高等学校
おすすめポイント:「 社会的能力とEQを育み、子供たちが幸せになる力を育み、自分、他者、社会に対してより良い、新しい選択肢をつくれるようになるための1冊です。子供も大人にも是非読んで欲しい1冊です。 」
こんな人に読んでほしい:「 教育に関わる人・小中学生の保護者」
編集部から:原著は 「The Triple Focus」という2014年に発売された69ページの本ですが、EQ (感情知性) のダニエルゴールマン氏とシステム思考のピーターセンゲ氏がコラボすることで、人の内なる世界と外の世界の捉え方を、3つのフォーカス(自身、他者、外の世界)として整理され、未来を生きる若者達に教えるべき新たな教養として提案されている良書です。社会性と情動の学び(Social Emotional Learning、略してSEL)に関する本は日本でも少しずつ増えていますが、世界的権威のお二人が、なぜこの3つがフォーカスだと考えられているのかを知ることは本質的な重要性の理解を深めることでしょう。
斉藤先生からもう一冊のおすすめは、『こどもと大人のためのミュージアム思考』。上野公園近隣の美術館や大学といった文化施設が合同で行うラーニングプロジェクト、「Museum Start あいうえの」メンバーによる共著。Museum Start あいうえのは小学生から高校生まで参加できるプログラムがありますよ。
渡辺貴裕 (著), 藤原由香里 (著)
単行本: 304ページ
出版社: 時事通信社 (2020/10/5)
推薦者:竹村詠美、FutureEdu 編集部
おすすめポイント:「 子ども達が主体的に学ぶ、すなわち自ら学びの体験から意味づけをし、その気づきをさらなる学びの活動にいかすことが求められている一方、教科書的な学びでは、理解から表現への一方通行で留まりがちです。本書は、京都府八幡市立美濃山小学校における演劇的手法を切り口とした授業改善と研究の取り組みから、身体性や想像性が伴う学びがいかに理解と表現の循環、すなわち発展する学びにつながっていくのかを知ることのできる一冊です。 」
こんな人に読んでほしい:「 教育者や、教育行政、演劇関係者向けに書かれた著書ですが、 演劇と勉強は縁遠いと思っていらっしゃる方のアンラーンとしてもオススメの一冊です。」
編集部から:演劇的手法を教育に取り入れることには縁遠く感じられる方も多いかもしれませんが、なりきってみる、即興的な対話を取り入れるなど、身近に演劇的要素を取り入れる方法もあります。自分や他者をより深く理解することにつながる演劇的手法、公園で隣同士でスマホをいじったりゲームをする今だからこそ重要性が増してきています。
デモクラティック・スクールを考える会
単行本(ソフトカバー): 194 ページ
出版社: せせらぎ出版 (2008/6/1)
推薦者:竹村 詠美、FutureEdu 編集部
おすすめポイント:「民主主義の危機が謳われる現在、果たして親世代の我々は、民主主義の実践者として生活を送っているでしょうか?デモクラティックスクールは、子ども達が自分の学びに責任を持ち、学校という社会の構成員の一員として、カリキュラムや運営にまで参加するという学び舎で、1960年台に米国で始まりました。一つの特徴として運営ルールを参加者全員で決めています。私もイスラエルのデモクラティックスクールで、保護者、教員、生徒が共に学校の校則の是非について議論をしている現場や、白馬インターナショナルスクールで生徒さんと先生が寮での生活のルールについて民主的に議論をしている様子を拝見し、民主主義の参加者としての経験を積むことの重要性を思い知らされました。本書は日本のデモクラティックスクールの草分け的存在の3校での実践や、生徒さんやスタッフの声を知ることの出来る一冊です。」
こんな人に読んでほしい:「 お子さんに主体的に人生を謳歌してほしいと思われている大人や、義務教育のシステムに疑問を感じられている方々。」
編集部から:英語で挑戦できる方には、世界最大規模の公立デモクラティックスクールネットワークの立役者である、イスラエルの教育者、ヤーコブ・ヘクト先生のDemocratic Educationもオススメです。
企画編集:竹村 詠美