アメリカの小学校での歴史教育から学ぶ、子育てのヒント

もし今日本に住んでいて、子供から「何で歴史を勉強するの?」と聞かれたら、あまり深く考えずに「昔の事を知ることは大切だし、面白いと思わない?」と答えていたような気がします。でも、アメリカで歴史の勉強を始めた子供達と話していくうちに親子で歴史を勉強することの奥深さを感じるようになりました。今回はアメリカの小学校の歴史教育から学んだ子育てのヒントをお伝えします。

幼少期から歴史に触れる

アメリカで2月はBlack History Month or African-American History Month(黒人歴史月間)と制定されています。娘が通う地元の公立小学校ではアメリカにおける黒人の歴史についての授業が行われました。その他にも11月のThanks giving dayなど国民の祝日に合わせて歴史を勉強することもあります。

また、黒人歴史月間に合わせて書店ではBrad Meltzer氏の絵本「I am Harriet Tubman」の読み聞かせイベントが開催されていました。(この「I am ~」の絵本は後述しますが、大人が読んでも面白い絵本シリーズです)Harriet Tubmanは自身も奴隷でありながら、逃亡が成功した後、奴隷解放運動に尽力した女性です。参加者のほとんどが未就学児でしたが、子供達は親に質問しながら熱心に聞き入っていました。

小学校低学年では歴史の勉強を通じて何を感じたかが大切

小学校低学年で歴史を学ぶといっても出来事を深堀りするというよりは、時代背景について勉強したうえで、「人として大切なことは何か」について主に学ぶので日本の科目で言うと社会よりも道徳に近いような気がしました。

例えば、娘は今年、Ruby Bridgeという女性について勉強してきました。Ruby Bridgeは現在63歳ですが、1960年に人種隔離政策廃止運動の一環としてこれまで白人しか通うことが出来なかった小学校に黒人として初めて通うことになった女性です。大人の男性3人に囲まれながら物々しい雰囲気で登校する写真を見て子供達は一様に「信じられない」と声を挙げたようです。彼女がなぜこの小学校に通うことになったのか、実際に登校するようになってから待ち受けていた他の生徒、保護者からの強い反発、そんな中での素晴らしい教師との出会いを経て、人種に関係なく生徒達が遊べるようになるまでの日々を一通り学習した後、意見交換が行われ、「私だったら登校を諦めてしまうと思う」「彼女は勇敢でかっこいい」「逆の立場だったらどうだったか」など事実から想像し得る精一杯の思いをぶつけ合ったそうです。

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歴史教育から学ぶこととは

 娘はこうした授業を通して、歴史に名を残すような人物も私達と同じ人間であり、確固たる信念があれば辛い経験も乗り越えられる、そして「世界を変えられる」ということを少しずつでも学んでいるようです。

ただし、「歴史は勝者によって作られる」と言われるように、子供に断片的な情報を伝える事の恐さを感じることもあります。子供達が外国で歴史を学ぶ場合、より敏感になっているのかもしれません。私自身、子供と話しながら今まで自分の中に蓄積されて来た知識は正しいのかと疑問に思うこともあるので、その時は一緒に調べて、物事には全て多面性があることを伝え、一つの情報に左右されない客観的な物の見方の必要性を伝えるようにしています。

未就学児の子供に伝える場合は、時代背景を簡単に説明したうえで「あの人はすごいね」で終わらせるのではなく、学んだことを日常生活に取り入れる提案をしてみるといいかもしれません。

絵本の紹介

未就学児、小学校低学年向けの絵本で後世に名を残した人物が描かれている絵本としておすすめなのが「Ordinary People change the world」の絵本のシリーズです。New York TimesでTOP10に入ったこともある人気の絵本です。様々な分野で活躍した人々はいかに世界を変えて行ったのかをサブタイトル「Ordinary People change the world」に沿って分かりやすい平易な言葉で書かれています。絵本なので多少の誇張はあると思いますが、幼少時の彼らは皆とても個性的です。でもその個性を活かしたからこそ、彼らは偉業を成し遂げられたという話を読んでいると読み聞かせしながら親でもはっとさせられる言葉が多く、親子で楽しめる絵本です。

子供に歴史を教えるというと、どこから教えればいいのか、またどう伝えればいいのか悩みますが、まずは子供が興味を持った人物について一緒に調べながら「ここに書いてあることは本当なのかな?」「この人はどうやって偉業を成し遂げられたんだろう?」と親子で話し合っててみると今まで気が付かなかった新しい発見があるかもしれません。

Witten by 小泉 加奈子