[書評]「平均」を求めることに意味はあるのか?
FutureEdu Tokyo代表竹村がお薦めの洋書の書評を寄稿させていただいているタトル・モリエイジェンシーの「翻訳書ときどき洋書」。第6回目の本は"The End of Average: How We Succeed in a World That Values Sameness" (by Todd Rose)、翻訳書『平均思考は捨てなさい』(著者:トッド・ ローズ 訳:小坂恵理 )です。「平均」という概念が誕生したのは約180年前で実はまだ歴史が浅いものだそうです。過去、多くの学者により議論を重ねられてきましたが、今こそ教育の観点からも「平均」を基準に据えるという思考を脱する転換期に来ているのかもしれません。
現代社会では「平均」と関わらずに生活をするのは難しい。
日経平均株価、平均年収、坪単価、平均身長、平均体重、偏差値(平均を使って計算されている)など、皆さんの日常でも平均を使ったベンチマークは多いのではないだろうか? 『平均思考は捨てなさい』では、ハーバード教育大学院で「個性学」プログラムを推進する心理学者のローズがその「平均思考」の弊害を論じている。
「平均以上」を取るのに躍起になる現代社会
今やそれ無しでは社会が成立しないように思える平均であるが、実はまだ誕生してから180年前後の概念である。1840年代にベルギー出身のケトレーの発案により、5738人のスコットランド人兵隊の身体測定で、世界で初めて平均が計算された。理想的な兵士の身体特徴を表現するのが目的だったそうだ。
ケトレーの思想では、平均からの逸脱は欠陥の表れだと考えられ、「平均の人間」こそが最も優れて美しいものだと考えられた。今でも健康診断で使われているBMI(Body Mass Index)はケトレーによって平均的な健康状態を測るものとして生み出された。
ケトレーの平均の考えは社会科学者により広く受け入れられ、特定のグループ毎の平均値が「タイプ」という特性として表現されるようになった。「神経質なタイプ」「リーダータイプ」といった具合である。また公衆衛生や物理学などの自然科学分野にも幅広く平均の考えが取り入れられるようになり「平均の時代」が始まった。
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出典:タトル・モリエイジェンシー「翻訳書ときどき洋書」(https://note.mu/tuttlemori)
書籍販売サイトはこちら (Amazon.co.jp にリンクします):"The End of Average: How We Succeed in a World That Values Sameness" by Todd Rose (2016年出版 )・『平均思考は捨てなさい』 著:トッド・ ローズ 訳:小坂恵理 早川書房 2017年5月発売